現実逃避5.0

覆水盆に返らず

狩勝峠-北海道紀行4

根室本線が災害のために寸断されていて、東鹿越から新得駅間が代行バスになると、根室本線の車内アナウンスが言っています。それが初耳の私を乗せた列車は無常にも東鹿越駅につきました。

雨の吹き付けるプラットホームに降りたら、代行バスは駅舎に横付けされていました。

10人弱の客を乗せ、静かに動き出したバスの車窓に、盆地の風景が流れてゆきます。遠くの山には霧がかかっています。バスの行く道に人影はなく、建物もまばらです。大きな川は空知川でしょうか。雨で増水し、音を立てて流れる川面にも、霧が降りています。見事な川霧に圧倒されて、写真を撮るのも忘れていました。

代行バスは、代行区間のすべての駅に止まります。「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地、幾寅駅(いくとらえき)の玄関には「幌舞駅」の看板。駅の外観は映画のままでした。今にも、トロッコで逃げる高倉健を、丹波哲郎が銃撃しそうですが、それは「網走番外地」です。

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バスが山道を上り始めると、あたりの霧が次第に濃くなり、やがて車窓が全部真っ白になりました。比喩ではなく真っ白い霧の峠道を、右に左に、文字通り最徐行でバスが進めば、乗客は皆無言になり、ただ谷側には落ちるなと祈るばかりです。

麓が目前に近づいて、ようやく霧が薄くなったところで、生還記念の車窓風景。

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 あの川霧を描こうとしても、私の力ではうまく描けないでしょうが、そのうち忘れてしまいそうなので

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 熊