現実逃避5.0

覆水盆に返らず

逆流する車窓風景 絵を描かなくても楽しい遠近法のはなし(再掲)

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新しいヘッダ画像を描きました。茨城のどこかの堤防です。1000×200pxですが、スマホ版はこれより領域が狭いですね。

前に遠近法の話をしましたが、絵を描かない人にとってはどうでもいい内容だと思っていました。もとよりこのブログの内容は万人にとってどうでもいい物ではありますが、今日もそれです。

日常の中の遠近法

たとえば、川沿いの見晴らしの良いサイクリングロードを、自転車で流しているときの風景。近くの景色が一瞬で飛び退いていくのに、遠くの景色が自分を追いかけてくるように感じませんか。それは直線区間においては錯覚ですが(※1)、この原理の核心が線遠近法だと知っているでしょうか?知っておられたら、ここから先は無意味です!

線遠近法とは、画面に奥行を持たせるときに、奥行きの収束する点を定める描き方です。直線上に並んでいる物は、遠くに行くほど小さく見えます。極限まで小さくなって見えなくなる点を消失点(VP)として画面の中に定めるのです。対象が地面(※2)に対して平行なら、消失点は、見る人の目線の高さ(EL)にあります。

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厳密に言えば、ふつう視界の中に消失点は複数あります。斜めに交差する道なら、それぞれの道の延長線上に消失点がありますし、脇に坂道があれば、坂道の消失点はELにも重なりません。ですが今回重要なのは遠くの物ほど小さく見えるということだけです。

追いかけてくる景色

見出しと文章が倒錯している気がしますが。要するに、遠くの景色が追いかけてくるように感じるのは、遠くの物ほど小さく見えるからです。物が小さく見えるなら、物と物の距離も小さく見えます。

f:id:machigaeta:20210104003808j:plainためしに手で枠を作ると、長辺12センチくらいの枠ができます。この枠で風景を切り取ると、遠くの大きな建物も、何キロという地平線でも12cmの中に収まります。画角に収まる実際の距離は、奥に行くほど大きいのです。これが遠くの景色がゆっくり流れる理由です。では、ゆっくり流れているだけの景色を、なぜ追いかけてくる(逆流している)とまでに錯覚するのでしょうか。どこかに流れの境目があるのでしょうか。

流れの境目になるライン

景色は奥に行く「ほど」ゆっくり流れます。景色の中の一点を注視するとき、その奥は、そこよりもかならずゆっくり流れています。ぼんやり見ている景色にも、実は核となる点があって、それは目線の高さ(EL)に重なります。注視点より奥がゆっくり流れると、全体が流れ過ぎてゆく景色の中では、まるで追いかけてくるように感じるのです。

流れの境目になるのは注視点(目線の高さ)でした。つまり、見る人が注視点を変えれば、境目も変わるのです。列車に乗ったときなど、車窓風景が開けていたら、流れる景色のなかで注視点を移動してみてください。注視点を移動しながら景色の流れを観察すると、面白い感覚が味わえるはずです。

今回すごく簡単なことを回りくどく言いました。

運転中はよそ見しないように。


山側【速度計 左側車窓】東海道新幹線のぞみ200号★新大阪→東京★【Shinkansen Superexpress】Bullet Train "NOZOMI"


※1曲線区間の説明はしない

※2厳密に言うと視線です