昔ラジオから流れてきた、空飛ぶ山伏の怪談を憶えています。
雪深い山の奥にある、簡素な避難小屋。数人の山人が肩を寄せ合って朝を待っている。そこにどこからともなく、シャン、シャン、シャンという、山伏の持っている、あの錫杖(しゃくじょう)の音が近づいてきて、ドンドンドンドンと戸を叩く。
人ならぬその気配に、山人たちが息を殺していると、錫杖の音は屋根の上に舞い上がり、天井をどーん、どーん、と飛び跳ねた。
そんな話を聞いたのは、『山怪』という、山に暮らす人の不思議な話を纏めた本の特集番組であったと思います。
読んでない本を薦める(自由律)
空飛ぶ荒法師。底知れない怖さとスター性を感じます。
時は流れて、昨年8月のある日、私は無謀な登山客として、旭岳の濃霧の中を一人歩いていました。
道中数回、霧の彼方に気配を感じることがありました。やっと人がいた!いや人か?もしや熊か?そのとき、脳裏をよぎったのは、あいつでした
なお霧は秋、登山は夏の季語らしいです。
来月また旭岳に行きます。