絶食27日間の記録
栄養剤から解放された27日目以外の日数はおよそ適当。
初日から3日目 無(完全なる無)
栄養も水分も全て点滴によって得た。腹は減らない。そもそも食欲がない。苦痛があるだけだった。
3日目から15日目 無(水300cc)
1日300ccの水を飲むことを許される。一気に飲んで枯渇させないようにとのご配慮から、朝・昼・夕に100ccずつ渡される。渡された吸い飲みを、パイプに見立てて小粋にすするのが唯一の娯楽だった。10日くらい経って、次の段階に移行するかというときに、空腹感があるかと聞かれたが、それももうわからない。
15日目から27日目 エレンタール
朝・夕の2回、昼は無し。エレンタールというのは栄養剤の名前だ。治療のためには栄養をつけなければならないが、大腸からの漏出があるため、腸に残渣の残らないエレンタールが提供(薬局から処方)された。エレンタールのボトル1本は300ccで、コーヒー、パイナップル、梅などのフレーバーが楽しめるが、いずれも後味はドブに近い。一気飲みしたほうが苦しみが少ない。なので冷やさずに常温で逝きたい。
このころ、自販機でジュースを買うことも許された。それで「復刻堂いちごオレ」を飲むと、入院生活のやり場のない憤懣が不思議に収まった。いちごオレは他の飲み物とは違う。なにかよくない物が入っていると思う。
27日目から35日目 流動食
27日目にして、はじめて食事が提供された。配膳されたのは、おもゆ(重湯)という、水分のみのお粥と、具のないお吸い物だった。スプーンで一口、二口食べて、美味いと思った。自然と笑みがこぼれたことに、自分でも驚いた。3日目くらいからは真顔で淡々と食べた。
初回は感動のあまり急いでスケッチをしたが、流動食のビジュアルは毎回同じだった。
35日目から40日目 おかゆ
おかゆは体調の安定化に伴って、三分粥、五分粥、全粥と進化した。おかずもそれぞれの段階で異なっていて、三部粥のときのおかずは、粉砕されたブロッコリーなど、奇抜な物が多かった。