漁村の怪

網元(あみもと)

船舶・魚網などを所有し、多数の漁夫を雇用して網漁業を営む者。網主。⇔網子

広辞苑

  その駅で降りる客は少ない。静かな漁師町の駅である。駅前のたった一軒の旅館だけが、かつての賑わいを忍ばせる。旅館の経営者は、数年前に新しい男に変わった。網元と呼ばれるその男は、20代でこの町にやってきて、漁師として身を立てた。漁業組合の幹部を努める、町の有力者だ。

 最近、町に不穏な噂がある。旅館の宿泊客が、行方不明になるらしい。先代の経営者は、代々旅館を引き継いできた町の名士で、町長選挙にも出た。急死した晩は、網元と二人で呑んでいたそうだ。その頃から不審な事件が多いのだとか。

別のケースとしては、若い漁師が岩場の影で尻を押さえて泣いていたというのもある。

 

そんなことを考えたのは 昔、海岸線を走る列車に乗っていた時、

「お降りのお客様は、網元にご注意下さい。」と車内アナウンスが言ったからだ。

足元にご注意下さいの聞き間違いだった。

日の出前の車窓に漁り火が見えた。

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今週のお題「外のことがわからない」