ボロボロの自転車でふらつきながら、
手に余る大荷物を持った男が、
早朝の公園に現れた。
彼はこけそうになりながら自転車を降り、
異様に大きく膨らんだリュックの中から、
古新聞をごっそり取り出すと、それを池のほとりに広げ、
その上に、これまたリュックから出した、
老人がゲートボール大会で使うような、
簡易的な椅子を置いた。
公園にお住まいの人か
そう思われながら、
私は椅子の横にイーゼルを立てて道具を広げ、
水辺の景色を下手な油絵に描き始めた。
時折通行人が遠巻きに見たり、横に立ったり、
近づいたり遠ざかったりする。
しかしその程度のことで恥ずかしがっていては、絵は上達しない。
30代で将来の夢があるなんて自分が怖すぎる。
完全に基地の外側の人材である。
今更何が恥ずかしいのか。
私の迷走は始まったばかりだ。