現実逃避5.0

覆水盆に返らず

真夏の旭岳で遭難

大雪山麓の宿の朝は、すでに霧が出ていた。

始発のロープウェイに乗り、終点姿見駅から登山道。次第に急角度になって行き、たどり着いた山頂は、信じられないほど霧の中だった。

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 登山客の大半は、来た道を引き返して行った。

蛮勇をふるい、私がそのまま進んだルートは、

山頂から>間宮岳>中岳温泉>裾合平>姿見の「周遊コース」。

晴れていれば初心者でも大丈夫だが、この日は違った。

濃霧と、私の圧倒的な運動神経により、

最初の斜面でいきなり本格的な滑落を味わった。

 

そこから先の長い道のりは、所々ロープでそれとわかるように

示されてはいたが、その目印の控えめさは、私が完全に迷うのに十分であり、

かつ始終霧によって、前後数メートルの視界も利かなかった。
四方八方が白い霧の中で、周りに人影はなく、熊だけはいるかも知れなかった。

 

孤独と不安の高まりはついに、歩きながら軍歌「雪の進軍」を、

かなりの大声で歌うという奇行となって現れた(映画「八甲田山」参照)

 

霧が晴れたら、すぐ後ろに人がいた。

 

私の歌はいかがでしたか?

 


山をなめると恥をかく